深海のこえ

社会の底辺で哀をさけぶ

HELLO WORK

求人サイトを見ている、という記事を書いてすぐ職安に向かった。
コロナの影響か人が多い。小さな町にこれだけの人が職にあぶれているのか…と思う。

職員の女性が、こんなのはどうですか、と印刷してくれた三枚の求人票にさっと目を通す。その中から、ババ抜きでジョーカーを引き当てませんように、とでもいうような手つきで一枚を抜き取った。

「それ応募してみます?」
「あ、はい」
あ、あ、反射的に返事しちゃった。

女の人は手際よく先方に電話をかけていて、私はそれをぼんやり眺めている。二人を隔てる飛沫感染予防のビニールシートが、架空と現実の境目みたいに見える。

職安を出たその足で履歴書を買いに行き、帰ってすぐに空欄を埋めた。ボルトもびっくりのスピード感。
熱いうちに鉄を打っている、というよりは、心の中を暗雲が覆いつくす前にはやくはやく、という感じ。雨が降ったら手遅れになる、私は傘を持っていない。

しかし………盛っても盛ってもなお、ショボショボの私の履歴書よ。これは酷い。
しかも字、間違えたし。試験の試に、平成の成みたいな斜め線入れちゃったし。もういい、書き直すのめんどうくさい。
極めつけは、「何か不満でもあるんですか?」と問いたくなるようなこの顔。照明の明るさで若干顔が白とびしているにも関わらず、隠しきれない闇のオーラ。
“一目で不適合を見抜かれ、ふるい落とされるのではないか?”
よぎる不安も一緒に封筒の中へ押し込め、郵送せずに持っていった。感じよい受付のお姉さんに渡して、任務は完了。

自分で応募したくせに、もし働くことになったらどうしよう?と、急に焦り出す。
その夜は、脳みそをちくちく小さな針で刺されているような、目元を懐中電灯で照らされているような不快感でなかなか寝つけなかった。
働いているときはよくこうなっていて、一睡もせずに職場へ向かっていたのを思い出してまた怖くなる。

このまま電話がかかってこなければいいな。